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名古屋地方裁判所 昭和42年(借チ)3号 決定 1968年6月07日

申立人

小牧タクシー株式会社

右代理人

大場民男

相手方

名古屋鉄道株式会社

右代理人

木村信雄

主文

別紙目録記載の土地についての申立人の借地権を堅固な建物所有を目的とするものに、期間を昭和七五年一二月一日まで、賃料を一ケ月3.3m2当り二七〇円(全部で一万二一五〇円)と変更する。

申立人は相手方に対し二〇〇万円を支払え。

理由

一申立人は別紙目録記載の土地についての借地契約を堅固な建物所有を目的とするものに変更するとの裁判を求め、予備的に同目録記載の建物を同目録記載のとおり増改築することを許可するとの裁判を求めた。

二本件記録によれば次のことが認められる。即ち

(1)  本件土地は相手方の所有地で、戦時中は申立人会社の発起人の一人であり現在顧問をしている舟橋市がこれを借受け耕作していた。たまたま相手方会社の小牧駅舎が改築されることに確定したので申立会社は相手方との間に相手方の旧木造駅舎を買受けこれを本件土地に移築すると共に、申立会社は本件土地を相手から右建物でタクシー営業をなす目的で賃借した。

(2)  右契約は昭和一九年頃成立したものと考えられるが書面に作成せられたのは昭和二五年一二月一日であつた。それによれば期間は昭和二五年一二月一日から昭和二六年一一月三〇日まで、土地の範囲は105.78m2(32坪)賃料は一ケ年四〇〇〇円の約であつたが、後に土地の範囲は現在申立人が使用している148.76m2(45坪)賃料は半ケ年四万九八〇〇円となつた。然し、右期間の点は本件賃貸借が前記のように非堅固建物所有を目的とする賃貸借であるから借地法第二条に違反し、結局二〇年とみるべきである。従つて、期間は昭和四五年一二月一日までであり、残存期間はあと約二年六月をあますに過ぎない。

(3)  申立人はその本社および駐車場等を小牧市内の他の場所に所有し、現在本件建物を会社ならびに労働組合の各事務所従業員の住居として使用しているのであるが必ずしも常時使用している様子もない。従つて申立会社にはもはや本件土地を必要とする事情がないのではないかと思われるふしがある。然し、近時、申立会社の業績が向上しなお本件土地建物を必要とするものと考えられる。一方、相手方は本件土地附近をその経営の乗合バス発着場として使用しているのであるが、小牧駅の乗降客の増加に伴い、バス乗降場を本件土地まで拡張すべき必要が将来生ずるかもしれないことが想像し得ないではない。然し、さしあたつて、その必要のないことは相手方がいままで賃料値上の請求はしているけれども土地明渡を求めた形跡が認められない事実に徴し明かである。従つて、前記期間は期間満了と共に更新拒絶の理由なく更新さるべき公算が大である。

(4)  本件土地は相手方会社小牧駅前の鉄道用地であり、昭和三八年三月二六日準防火地域に指定せられた。又本件土地附近は商業地域として最近とみに発展し、特に西川屋百貨店ができてからはにぎやかとなり、附近の鉄筋ビルは二十数個を数えるに至つた。

(5)  本件地上の建物はさきにも述べたように相手方旧小牧駅舎を移築したもので相当老朽しており改築の必要がある。申立人は本件建物を鉄骨二階建に改築し、階上を会社事務所、階下を車庫として使用する計画である。

以上の事実が認められる。そして、右認定事実によれば本件土地は現在ビルが密集している地帯といえないにしても、現在建物所有を目的とする土地賃貸借を締結するとすれば、当然堅固な建物所有を目的とする契約を結ぶべき地域となつたといえる。

従つて、本件契約後に右のような事情の変更があつたものであるから申立人の本件借地条件変更の申立を許すべきものと考える。

鑑定委員会の意見書によれば本件土地賃貸借は小牧駅構内でのタクシー営業のため二台程度の営業用自動車の駐車用として使用の範囲を制限した種類のものであると認めている。そして、甲七号証の五、六にはその趣旨とまぎらわしい記載があるが、それは構内タクシー営業としては自動車二台程度のものしか許さぬという趣旨であつて、借地権、地上建物の使用についてかかる制限を認めた趣旨ではない。又小牧駅前のありかたについては小牧都市改造計画懇談会が設けられ改造計画案もあるようであるが、それはあくまで計画案の域を脱せず具体化しているわけでもないから右事実によつて前記判断が左右せられるものではない。

三附随処分

本件について考慮すべき附随処分は期間、賃料、および財産上の給付の三点である。右認定の事実および鑑定委員会の意見その他本件に現れた一切の事情を考慮し次の如く定める。

(1)  期間は契約成立時から五〇年即ち昭和七五年一二月一日までとする。

(2)  賃料は一ケ月3.3m2当り二七〇円(全部で一万二一五〇円)と定める。

(3)  本件借地権が堅固な建物所有を目的とするものに変更されたことによる相手方の不利益を補填するため申立人は相手方に二〇〇万円を支払うべきである。

以上の理由により主文のとおり決定する。(奥村義雄)

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